手書きで正確かつスピーディーに伝える
映像ディレクターとしてどのようなお仕事をされていますか。
メインの仕事は映像の制作で、ドラマ、映画、ミュージックビデオなどさまざまです。最近はそこから活動の幅が広がって、コンサートやテーマパークのアトラクションの演出など、エンターテインメントをボーダレスに行き来しています。
仕事のなかで手書きをする場面は。
監督として考えていることを、スタッフや役者に伝える手段として手書きをしています。例えば、ドラマの台本に撮影の順番や場所を書き込む「カット割」という作業があります。ロケハンの時に、どこに役者を配置してどんな芝居をしてもらうかをシミュレーションしながら、手書きでカット割をします。ほかにも、頭のなかにあるイメージを描く「イメージメモ」や、それをより具体化した「絵コンテ」も手書きですね。
iPadやPCを使うことはないのですか。
もちろんデジタル作業もやるんですけど、どこか自分の手で書きたいんですよね。最も正確かつスピーディーに自分のイメージをアウトプットできるから。手書きで伝えられないものは、ほかの方法でも伝えられないと思っているところがあります。
現場は時間が命
お持ちの筆記具を見せていただけますか。こだわりはありますか。
筆圧の濃さ、文字の大きさ、色ですね。僕が書き込んだ台本や絵コンテをモノクロコピーしてスタッフ全員に配るので、字が薄くて読めないことがないようにしっかり書きます。
台本には蛍光マーカーが多用されています。
慌ただしい現場で、一目で「誰のセリフか」がわかるように色分けします。
イメージメモには赤い水性サインペン。ノートはコクヨ「Campus」ですね!
この水性サインペンは走り書きしてもかすれにくいので、ADの頃から20年近く使っています。ノートもずっと「Campus」です。感覚的にノートの厚みや罫線の幅がちょうどいいんです。あえてほかのノートにしようとも思わないし、自分のクセみたいなものです。
ずっと使っているもの、使いやすいものであることがポイントなんですね。
現場は時間が命なので。刻々と日が暮れていく3秒や5秒に僕らは命をかけているわけです。いかに台本に早く書き込むか、視覚的に認識できるか。他者にどうやって伝えるか。それを20年近く続けてきたなかで編み出した方法なんです。
手書きのノートは捨てられない
そんな石田さんに「大人のかく力テスト」を受けていただきました。「紙&筆記具 五感フェチ度」が高いという分析です。
自分の手書きについて意識したことがなかったので、わかりやすく可視化してもらっておもしろかったです。五感フェチですかあ(笑)、確かに本をぺらぺらめくったり、紙の質感や匂いが好きなんですよね。だからこそ無意識に「紙に手で書きたい」と思っているのかもしれません。
「手書き コミュ力」が高いという結果も出ています。
これは自覚しています。コミュニケーション能力がないと仕事にならないんです。僕から一方的に伝えるだけではなく、スタッフと対話をしながら「そうだね、やっぱりこっちにしようか」ということもあります。手書きはインタラクティブなコミュニケーションを円滑にするための手段なんです。
ところで手書きしたCampusノートはどうしているんですか。
家に全部取ってあります。あの時自分の思考プロセスがどうたったかなと見返すと、手書きならではのニュアンスが残されている。デジタルのデータはどんどん捨てるタイプですが、手書きのノートは絶対に捨てられないですね。