2020.11.27
第6回「キャンパス アート アワード2020」最終審査~応募総数2071点から選ばれた作品は...?
「Campus」のロゴで知られているコクヨのキャンパスノート。学生時代から愛用していて、思い出がいっぱい詰まっている・・・そんな方も多いのでは?もし、自分が描いた絵が「Campus」の表紙だったら?そんな夢が実現するのが、今年で6回目を迎える「キャンパス アート アワード」です。栄えある2020年の受賞作品が決定しました。
審査員は絵本作家のあだちなみさん、色鉛筆画家の林亮太さん、書店店主・キャラクタープロデューサーの夢眠ねむさん
「キャンパス アート アワード」は、コクヨと読売中高生新聞(発行所 読売新聞東京本社)が共同開催する、全国の中高生を対象とした絵画作品のコンテストです。今年のテーマは昨年と同じ「My Sweet Home Town〜地元のイチオシ」。自分の好きな地元の風景、風俗、風習、行事、料理、菓子などをみずみずしい感性と自由な発想で描きます。
2020年6月1日から 9月11日の応募期間中に集まった作品は2,000点を超えました。この中からグランプリ1点、読売中高生新聞賞1点、コクヨ賞1点、地区優秀賞6点が選ばれます。最終審査会は、10月21日、読売新聞ビル(東京都千代田区大手町)で行われました。
たくさんの力作を並べて、いよいよ最終審査スタート!
審査員は、「くまのがっこう」シリーズのイラストを手掛け、多摩美術大学非常勤講師としても活躍している絵本作家のあだちなみさん、写真のようにリアルな作風で知られる色鉛筆画家の林亮太さん、そして多摩美術大学出身で書店経営やキャラクターのプロデュースなど幅広く活動している夢眠ねむさん。あだちなみさんと夢眠ねむさんは本アワード初参加、林さんは今回が3度目の参加です。
さて、どんな審査会となるのでしょうか!?
最終選考に残った秀作を前に、悩む審査員たち
会場には、地区審査を通過した36作品がずらり勢揃い。審査員は、あらかじめ全作品をデジタル版で見ていますが、原画を見るのは初めて。実物を前に、圧倒された様子です。
「データではなく原画で見るとまた印象が違うなぁ」と林さん。「これまでの受賞作を研究してきた作品が多いですね」とあだちさん。夢眠さんも「これは選ぶのが難しいですね」と驚きの声。
「描いた人の熱量が伝わりますね」と林さん
審査員には付箋が渡され、気に入った作品に票を投じていきます。今年は数回に分けて、徐々に候補を絞っていきました。大いに悩みながら、3回目の投票でようやくグランプリ、上位入賞作品が選ばれました。
ひとつひとつ丁寧に作品を見ていく審査員たち。「上手いなぁ、中高生とは思えない!」「配色をよく考えているね」「あ、ここにこんなものまで描かれてますよ」「好きっていう気持ちが伝わってきますね」など、感嘆と称賛の声が続きます。
描かれた名物を見て「素直に描いていていいですね」とあだちさん
作品の裏には、その題材を選んだ理由とその絵で伝えたいことなど、作者の熱い想いがびっしり書かれています。そのメッセージに「読めば読むほど選ぶのが難しくなる・・・」と悩む審査員たち。
「全部いいんだよなぁ」と悩む夢眠さん
最初のうちは審査員も順調に投票していましたが、数が絞られてくると手持ちの票をどの作品に投じたらいいのか悩み始めます。「全体の不思議感がいいですね」「よく雰囲気が出ていますよね」「どうしよう、決められない」と、選ぶ難しさに苦悩しています。
「テクニックがすごくありますよね」と林さん
審査員それぞれが「良い」と思ったポイントをそれぞれ発表しあいながら、何度かの投票を経て、各賞候補作品が絞られていきました。
苦悩の末に、ついに各賞を決定!
最終的にグランプリに選ばれたのは、秋田県の高校2年生 近藤 萌さんの「春はすぐそこ」でした。春がくる前の山の情景を豊かに描いた、作者の鋭い観察眼と感性が息づく作品です。高校生とは思えない素晴らしい描写力が高く評価され、見事グランプリに輝きました。
<グランプリ>
「春はすぐそこ」
(北海道・東北地区代表・秋田県/秋田公立美術大学高等学院2年/近藤 萌さん)
読売中高生新聞賞に選ばれたのは、香川県の中学3年生 西川 祐永さんの「可愛い丸亀城とかわいいおいり」。版画を選んだセンスの良さと可愛いと思う気持ちが素直に表現されている点が高い評価を受けました。
<読売中高生新聞賞>
「可愛い丸亀城とかわいいおいり」
(中国・四国地区代表・香川県/香川大学教育学部付属坂出小中学校3年/西川 祐永さん)
コクヨ賞に選ばれたのは、愛知県の高校3年生 纐纈 凜夏さんの「味噌ニコ(^o^)うドン!」。つるんと飛び跳ねるようなうどんの麺が印象的。よく見るとつゆに浸かっているところとそうでないところで具の色合いを変えているという細やかな描写が見られる素晴らしい作品です。
<コクヨ賞>
「味噌ニコ(^o^)うドン!」
(中部地区代表・愛知県/あいち造形デザイン専門学校高等課程3年/纐纈 凜夏さん)
皆さん、おめでとうございます!
審査員、受賞作品の魅力をおおいに語る!
無事に審査は終了。難しい選考を終えて、ほっと胸をなでおろしている審査員たちに、今回の作品についてのコメントをいただきました。
--グランプリ作品「春はすぐそこ」を選ばれた理由を教えてください。
あだちさん:テーマから地元の名物を描いた作品が多いなか、自分の心と体で感じたことをしっかり描いているのが素晴らしいと思いました。季節の移り変わりを感じる心を持っている人なのだなと感心しました。
夢眠さん:芽吹くふきのとうの奥に静かに佇む山鳥。物を描くのではなく情景を描いていること、静かで凛とした雰囲気にとても心惹かれました。細部までしっかり描き込みつつも程よく抜け感があり、あらゆるバランスがとてもいいと思います。
林さん:ぐっと色合いを抑えた日本画的な美しい作品で、高校生とは思えない技量を感じました。ストーリーが絵のなかに流れている印象があり、そこまで考えて描いたのかと思うと素晴らしいです。
--読売中高生新聞賞に選ばれた「可愛い丸亀城とかわいいおいり」については、いかがでしょうか。
林さん:版画で勝負してきた点が斬新でした。周りが何を描こうと我が道を行く!という感じがとてもいい。ノスタルジックな仕上がりも、これまでにない作品だと思います。水玉で光や空気感をうまく表現している点も素晴らしいです。
あだちさん:自分はこれが作りたいから作ったという気持ちが素直に表れていていいですね。一所懸命版画を作っている姿が目に浮かびました。作者の人柄が伝わってくる作品です。
夢眠さん:自分が信じる方法で勝負しているのがカッコいいです。テクニックと描きたいものが調和していると感じました。可愛らしいものとして「おいり」も描かれていて、伝統が若い世代にもしっかり受け継がれているんだなと温かい気持ちになりました。
--コクヨ賞の「味噌ニコ(^o^)うドン!」にはどんな感想をお持ちですか?
林さん:最終選考になった段階で、急に存在感を増してきた作品です。少し離れたところから見ると、美味しさが倍増するのが面白いなと思いました。素直に「うまい!」が伝わってきます。躍動感のある麺、うどんの中身にぐっと寄った構図など、「ノートの表紙になったら楽しいだろうな」と思いました。
あだちさん:いろいろな名物のなかから、あえてうどん一本で勝負している潔さが印象的でした。「これ、名物です!好物です!」という声が聞こえてきそう。すべてを味噌色で表現したところがすごいと思いました。
夢眠さん:味噌煮込みうどんといえばシコシコ麺。それがとても上手に描けています。よく見るとほんのり湯気まで描いてあるんです!最後までいろいろな発見がある、とても楽しい作品でした。
総評:好き・描きたいという気持ちを素直に表現した作品が高評価に
--全体を通じての感想は?
あだちさん:今回のコンテストに向けて、2000人以上の中高生が作品づくりに取り組んでいたかと思うと、それだけでとてもすごいことだと感じました。今回はじめての参加でしたが、子どもの頃ワクワクしながら絵を描いていたときのことを思い出しました。忘れていた気持ちを思い出させてくれた、素晴らしいコンテストでした。
林さん: 今回は、好きなものを素直に描いてくれた作品が今回グランプリをはじめ各賞に選ばれたと思います。私もコンテストへの応募経験もたくさんあるので、「この絵はこんなふうに描いていたんだろうな・・・」と作者の姿が目に浮かび、選んでいて切なさを感じた瞬間も。若い力に触れて大きな刺激を受けました。
夢眠さん:コロナによる休校・外出自粛期間に絵を一生懸命書いてくれた中高生に、愛おしさを感じました。作品はどれも素晴らしくて、個人的に好きな作品、上手な作品、思いを感じる作品など、選ぶのが本当に難しかったです。個人的には、ご当地を描きつつどこかに可愛らしさがある作品に惹かれました。
中高生ならではのパワーを発揮できる機会、ぜひ挑戦して!
--今後の「キャンパス アート アワード」への期待をお聞かせください。
「人と比べるのではなく自分の表現をもっと大切に」あだちなみさん
あだちさん:コンテストも回を重ねてくると、過去の作品を研究して「こう描くべきなんだ」と思い込んでしまいがちです。でも、こうすべきということは何もありません。自分の表現を大事にしてください。「これでいいんだ」からもう一歩踏み出すと、違うものが見えてきます。
「好きなものを素直にどんどん描いてほしい」林亮太さん
林さん:好きなものをどんどん描いてください。描きたいものを描きたいように描くというパワーは、中高生ならでは。いましかない若いパワーを大事にして、これからも描き続けていってほしいなと思います。
「ノートになったところをイメージして描いて」夢眠ねむさん
夢眠さん:ノートになって使われるときをイメージして描いてみましょう。そうしたコンテストの趣旨まで考えて作品づくりをした人が最終選考まで残っていたように思います。これからチャレンジする人は、「ノートになったらどんなだろう?」と想像しながら描いてみてください。
第6回目も力作ぞろいで選考が難航した「キャンパス アート アワード」。ご応募いただいたどの作品も、中高生が描いたとは思えないほど完成度が高く、みなさんの今後の活躍がとても楽しみです。「キャンパス アート アワード」は、デジタル化が進む世の中で、アナログ作品を応募できる貴重な機会です。これからもぜひ、チャレンジしてください!
各地区賞などの詳細はこちらで公開しています!
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